A WORD FROM THE CHAIRMAN

本物と、
出会える場を。

本物と出会える場を、できる限り多く用意したい。私たちの願いは、その一点にあります。

子どもは、一人ひとりがかけがえのない存在であり、自ら育とうとする力を内に持っています。私たちは、その力を信じることから始めます。安心して過ごせる場所、自分を十分に発揮できる環境——それが、私たちの教育の出発点です。

幼児期は、人として生きる土台が形づくられる大切な時期です。この時期に本当に必要なのは、知識を早く身につけることだけではありません。毎日の生活にリズムをつくる力、自分で考え動く力、人と関わる力、美しいものに心を動かす感性——そうしたものが、後の人生を支える根になると、長年子どもたちと向き合う中で、確信するようになりました。

私がこの確信を持つのには、理由があります。幼い頃、家にはいつも誰かがいました。音楽を学ぶ若者、書家、華道家、ギタリスト、ピアニスト、画家——彼らは私に何かを「教えて」くれたわけではありません。ただ、本物に生きている大人たちが、生活の中にいました。廊下からピアノの音がして、墨の匂いがして、夜は誰かが弦をつま弾いている。子どもだった私は、その空気の中で育ちました。

すべてに興味を持ったわけではありません。けれど、何かが確かに残っています。言葉になる前の感覚、美しいものに出会ったときの驚き、大人が本気で何かに向き合う姿。それらは、時間を経ても消えず、私の中に残り続けています。

吉田松陰の言葉に「愛深ければなすこと多し」というものがあります。子どもへの深い愛情があってこそ、心を尽くし、手をかけ、ときに待ち、ときに導くことができる。愛情なしに、どれほど正しい言葉を並べても、それは子どもには届かないと思っています。

自由は大切です。ただ、それは好きなようにすることとは違います。自分を律し、他者を尊重しながら生きるための自由——そういう自由を、子どもたちには身につけてほしいと願っています。

のびのびとした中にも節度があり、温かさの中にも凛とした軸がある。リズムは、そういう場所でありたいと思っています。

子どもの育ちの主体は、家庭にあります。私たちはその支え手であり、伴走者です。保護者の皆様とは、信頼と敬意をもって、ともに歩んでまいります。家庭と園が心を合わせ、一人ひとりの健やかな成長を支えていくこと——それが、私たちの願いです。

学校法人 井沢学園 理事長井澤士郎